「凛」ツアー印刷物制作 by塩見岳大
日時:令和元年6月2日
執筆者:塩見岳大
タイトル:「凛」ツアー印刷物制作
「COLORS」ツアーの印刷物制作をから半年。
解体新書のチケットを印刷物の制作を経験し、
迎えたのが「凛」ツアーの印刷物制作です。
環境的には、プロとして飛び出して半年。
冷房のない夏を乗り越えたことによって強靭な生命力が養われ、
メンバーによる共同生活にも順応し始めた頃でした。
お金も物もなかったが、無いなりに工夫をし、
大きく変化した環境に適応し、
仕事としての「和太鼓彩」と、
ようやく腰を下ろして向き合い始めた頃と言っても良いかもしれません。
僕としては印刷物の制作も3ツアー目となり、
パワーポイントの操作にも慣れてきた頃であります。
また、直感で制作していたデザインに対して葛西から
「デザインの理由を説明できるようにしろ」
という言葉を意識し、それを意識するが故に壁にぶつかっていた頃でもあります。
それまでの僕からしてみれば、デザインは直感的なものであり、
僕がそれが良いように思えたとしても、それは言語化できるものではなく、
他人に説明のできるものではありませんでした。
デザインの理由が説明できなければ、
そのデザインに対する論理的な反論も出来なければ、
議論の余地も生まれません。
何より、自らの感性と論理的な思考の両方を掛け合わせた方が、
より幅広いデザインを生み出す切り口を持つことができると言われ、
不満は抱えつつも納得した覚えがある。
(今は大いに納得していますが、当時はとにかく自分がやりたいようにやりたかったのでございます 笑)
人間関係に関しては極めて控えめで慎ましい性格の私ですが、
デザインや和太鼓となるとたまに横暴な思考になってしまう塩見でございました。
余談ですが、「COLORS」のタイトルは、実は僕の横暴なデザイン感覚から生まれたタイトルとも言えます。
元々別のタイトルのツアーだったのですが、
僕が印刷物のデザインを始めてどんどんカラフルにしていくもので、
終いには「僕のこのデザインにタイトルを合わせるとしたら”COLORS”の方が良い」と言い出してしまい、
奇跡的にその案が通り、「COLORS」のタイトルは生まれました。
タイトルにデザインを合わすのではなく、デザインにタイトルを合わさせるとは、
我ながらなんという横暴。今考えると恐ろしくてたまりません。
さて、本題に戻りましょう。
これまでのツアー、「衝動」は「奏」、
「COLORS」は 「祭宴」にフォーカスを当てた構成になっていました。
そしてこの「凛」ツアーでは「三心不乱」にフォーカスを当てていこうというのが、
チラシ制作時のキメとなっていました。
基本的に公演のチラシは演目を決めるよりもずっと早い段階で制作に入ります。
そのため、この段階ではまだ公演のイメージが明確に定まっていないことも多いのです。
例えば、「凛」ツアーでは最終的に「天心不乱」という、
織姫と彦星の物語を和太鼓で紡ぐ、という挑戦をしたのですが、
無論、チラシ制作の段階では決まっていません。
そのため、このチラシは「凛というタイトル」「三心不乱にフォーカスを当てる可能性が高い」
という二つの情報から制作に入りました。
「凛」という言葉を静かながらも迫力に満ちた様子と解釈し、
その言葉を体現できている写真を厳選。
当時「三心不乱」演奏時の照明によく使用していた赤色と、
「COLORS」ツアーとギャップができるよう、重い雰囲気を作り出すために黒色を基調としました。
執行の「三心不乱」の写真を切り抜いて二諧調化し、
「凛」のイメージシンボルを作り上げ、
この印刷物以降長く使うことになる「彩」の字を「かくのぉん」さんに書いていただきました。
そうして出来上がったチラシがこちら。
こうして出来上がったチラシを様々な演奏で配布し、
チケットを販売して回ります。
そして公演の日が近づいてくれば、
今度はパンフレットの制作が始まります。
この段階では、ツアーの演目と構成が完全に完成しているので、
僕はこのツアーに対して完成したイメージをデザインに落とし込みます。
凛のパンフレットの表紙では、
チラシで形成した赤と黒のイメージはそのままに、
昔話を彷彿とさせる和紙の質感を背景に敷きました。
彦星と織姫のシルエットを天野川が引き裂きつつも、
お互いを想う心を交差する十字で表現しました。
絵を描いてみたり、写真を加工してみたり。
このパンフレットには多くの挑戦が詰まっています。
実はこのパンフレットはパワーポイントのみを使って制作した最後の印刷物でもあります。
これ以降は徐々にIllustratorやPhotoshopを使うようになっていきます。
パワーポイントでのデザイン処理は色々と処理が大変で、
非常に思い出に残っている印刷物ですね。
こうして一つ一つ印刷物を見返していくと、
僕が当時考えていたことや、環境がうっすらと透けて見えてくるかもしれませんので、
皆様もたまに昔の印刷物を見返してみて、
「塩見はどういう意図でこのデザインを作ったのだろう」
と想像を巡らしていただけると幸いでございます。
それでは、バイバイ!
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