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「Qのデザイン」写真 by塩見岳大

日時:令和2年6月26日
執筆者:塩見岳大
タイトル:「Qのデザイン」写真

前年には「ゼンダイミドン」ツアー、オルフェウスでのライブラッシュを終え、
和太鼓彩が結成されてから12年を迎えた2017年。
次に行ったのが「Q」ツアーでした。

本日は当時のデザインを通して、この「Q」ツアーを振り返っていきたいと思います。

さて、この「Q」というタイトルですが二つの意味が込められています。
一つは12年という節目、
干支が一周したこの年から更にその次へ突き進んで行こうという意味合いを込めて、
一周を表す「O」に、「Q」のこの右下のちょろっとした部分が更にその次へ進んでいくようで相応しいのではないかと考えて名付けた「Q」。

もう一つは「Queen」の「Q」。
「Q」は三幕構成で、第三幕には女王と彼女を守る騎士達の物語を「Tales of The Queen 」と題して演じます。
実は当初は男の王様と五人の騎士の物語を描くという案が進んでいました。
なのでツアー名が「O(おう)」という案もあったのですが、
あえてトップに団体内に存在しない女性をおきました。
それを誰かが直接演じるわけではないシンボルとして掲げた方が、
女王も騎士達も引き立つのではないかと考え「Q」というタイトルに決定したのでございます。

男しかいないメンバーにとって男性の王様より女性の女王様を守る方がモチベーションも上がりますからこの判断は間違ってなかったのではないかと思います。
和太鼓彩の王様、葛西は守ってあげるには弱々しさが足りませんからね。
…というかそもそも和太鼓彩には守ってあげたくなるようなタイプの人間が少ないかもしれません。みんな最前線でゴリゴリ戦うのが好きそうなイメージ。

何はともあれ、
この「Q」ツアーの肝は第三幕の「Tales of The Queen 」にあります。
物語を演じるという意味では「凛」にて彦星と織姫とその父である天帝の物語を綴った「天心不乱」以来の挑戦となります。

余談ですが、「衝動」「COLORS」「凛」というかつての3ツアーに対して、
その後に行った「衝動2」「ゼンダイミドン」「Q」の3ツアーはリンクしております。

「衝動」と「衝動2」はもうタイトルからしてそのままですが、
かつての「衝動」セットリストを当時のメンバーの心情の変化になぞらえて組み替え、
更にパワーアップさせたのが「衝動2」。

メンバーの可能性や幅の広さにスポットを当てた「COLORS」に対して、
和太鼓が持つ未知の可能性や幅の広さにスポットを当てた「ゼンダイミドン」。

そして、和の物語の中で男性メンバーが女性を演じた「凛」に対して、
より斬新な西洋風の物語の中で女性を守る騎士を演じた「Q」。

僕がチラシなどの印刷物をデザインする上で特に面白かったのがこの「西洋風」の部分でした。
皆さんご存知の通り、この和太鼓グループ彩。和太鼓を演奏するチームでございます。
にも関わらず和楽器で「西洋風」の物語を演じるという決定に、演者としてはもちろんですが、デザイナーとしても大きくテンションが上がりました。

それまで、和太鼓を演奏しているにも関わらず、
「新しい事に挑戦する新進気鋭のチーム」や「和太鼓の古いイメージを塗り替える華やかな舞台」を表現するために現代的なデザインやカラフルなデザインは多用してきました。
しかし今回は西洋風の、それも剣と甲冑がぶつかり合う中世ヨーロッパの世界観!

ファイナルファンタジーやドラゴンクエスト、TalesシリーズなどのファンタジーRPGゲームが大好きな僕にとって気合が入らないわけがありませんでした。

まずチラシのテーマカラー。
今回の「Q」作品において、女王と騎士達は最終的にこの世を去ってしまいます。
決して明るいファンタジーではないので少し暗めのトーン。
あとは女王、女性のイメージとしての赤、王族としてのイメージや、中世らしさを感じられる金属的な質感も足したかったので金色も加えたいと思いました。

写真は赤と黒が映えるものを選抜しました。
特に下部の萩原と小川は赤い衣装を着ている上に、金色を髪に差込み共に大太鼓を叩いていたので即決で採用しました。

他の写真も全体とのバランスや写真自体のクオリティを考慮しつつ、なるべく赤と黒が映えるものを選抜しました。
上部に使った「衝動2」から「からくり」の一枚は赤と黒のコントラストが美しく、ずっとどこかで使いたいと思っていた一枚です。

中心には大きく「Q」!
今回のタイトルの特徴として大きいのが、一文字という点。
タイトルの字数が多いとその分字を小さくするか、改行を挟むなどを考えなければなりませんが、
今回は一文字ということで、気持ちよく、でかでかと真ん中にどん!と「Q」の字をおき、
それを女王に見立てて冠を被せちゃいました!

あとはより西洋的で少しゴシック感のある雰囲気を醸し出すために、
薄く透過処理を施したチェス盤模様を被せてあります。
写真を消すとわかりやすくなります!そいやっ!!

あと注意した点としては金色のバランス。
今回、文字情報は黒背景に金文字で入れております。
女王の物語なので、ある程度の豪華感は入れたいと思いました。
ただそのまま普通に金文字を多用するとこうなります。

うん。インパクトはあります。
ただこれではせっかく金色で囲った「Q」の字を喰ってしまい、
注目してほしい箇所が散漫になります。
また、僕的に金色は諸刃の剣で、使用法を誤ると逆に安っぽくなってしまうと思っています。
なので金色の明るさを抑え、「Q」の字の側では金色を使わないように配慮しました。
こうして全体のバランスを整えて出来たのが改めてこちら。

こうして出来上がったものをメンバーにチェックしてもらい、
修正したものを「Q」ツアー発表に合わせて世に送り出しているのでございます。
チラシのデザインが決定した後は同じモチーフでチケットを制作。

そして、HPやSNS用の画像素材を作っていきます。

それからしばらくして、公演本番に向けてパンフレットを作成。
パンフレット制作時には女王のセットが完成していたので…せいっ!!

女王の写真を編集し、今回は三つ折りにしたパンフレットの表紙におきました。
折ったら右側が表紙になるようになっています。

ちなみに裏面はセットリスト。
第一幕は和太鼓彩の過去の演目、
第二幕は和太鼓彩の新しい演目、
第三幕は「Tales of The Queen」を演奏したので、
それに倣ったデザインにしております。

最後に「Q」のフォルダを漁って見つけた懐かしい作品を見つけたので紹介します。
これ、なんだかわかりますか?

なんと、矢萩が公演中に「Tales of The Queen」の物語を朗読する時に持っている本のブックカバーでございます!
誰にも見えないだろうと思って本の背表紙の著者の部分が「Takehiro Shiomi」になっているのはご愛嬌。
公演中に気づいた人(見えた人)はいないと思います! 笑

…と今日は「Q」ツアーを通して、
塩見がデザインを制作する過程と成果を紹介しました。

僕は公演のデザインを考えると、
その公演で表現したいことやイメージが徐々に固まっていくので、
それが本番のパフォーマンスにも直結しいくというかなり特殊な和太鼓奏者でございます。

こうして制作物をご紹介することによって、
塩見が何を思い、何を考えて「Q」に臨んだのか、
もしかしたら拙い文章で書くよりも伝わるものもあるのではないかと思い、
このような形をとらせていただきました。

なので皆様!
これからもデザイナー塩見を通して、
和太鼓奏者塩見をいっぱいご覧いただければと思います!!!

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