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和太鼓・民俗芸能と向き合った4年間から繋がる和太鼓彩 by酒井智彬

日時:令和3年10月12日
執筆者:酒井智彬
タイトル:和太鼓・民俗芸能と向き合った4年間から繋がる和太鼓彩

皆さん、こんにちは!

酒井智彬です。

今回は大学時代にサークルにて向き合った「民俗芸能」と「大学卒業後、和太鼓彩でやりたいこと」をテーマに当時を振り返っていきたいと思います!

これまで、たくさんのヒストリーでも述べてきましたが、大学時代には民俗芸能を研究し、自分たちでも実践してみるというようなサークルに入っておりました。

2018年、そんな僕も4年生となり、サークル生活に終止符を打つことになります。
その中での学び・気付きは和太鼓彩へと繋がっていきます!

●民俗芸能・お祭りとの出会い

元々、サークルに入った経緯としては、何百年もの間、保存・継承されている民俗芸能では、どのように和太鼓が使われてきたのか、どんな演奏形態があるのかというようなことに興味を持っていたからでした。

民俗芸能は、各地の祭礼と結びついていることが多く、必然的にお祭りによく赴くことになります。

4年間の間に、学業の合間を縫い、日本各地の様々なお祭りに行き、多様な民俗芸能と出会いました。

その中で、元々勉強したかった和太鼓の使われ方や演奏形態など非常に勉強になりましたし、さらに民俗芸能を演奏される方々の芸能に向き合う姿勢・想いに演者として、大変影響を受けたのでありました。

民俗芸能を披露するようなお祭りは、年に1回のみ。

その1回のために、1年間練習してきて、お祭りに全てをかける。

1回に全てをかけるからこそ生じる自分の最大限のパワーを出せる。

さらに、お祭りは、日常とかけ離れた非日常的な時間・空間だからこそ、社会的なしがらみのない、演者の人間味が溢れ出る様を見ることができました。

これは、舞台に立つものとして、非常に学ぶところが多く、自分の毎回の舞台で、このお祭りで躍動する皆様と同じようにパフォーマンスを行いたいと思うのでした。

毎回の舞台を1年に1回しかない気持ちで臨むという心持ちが大変勉強になったのでした。

そして、民俗芸能を保存・継承する皆様の想いにも感銘・影響を受けたのでした。

皆様にとって、取り組んでいる芸能やお祭りのことを本当に心から誇りに思っていて、真っ直ぐに愛している。

芸能やお祭りがその人のアイデンティティの一部となるぐらい誇りを持っている。

大の大人の少年のような真っ直ぐな本気の様って、めちゃくちゃかっこいいんですよね。

単純に、人間の生き様として、物事に熱く・本気になれる大人に憧れました。

憧れと同時に一つの疑問を抱きます。

皆さまのアイデンティティの一部として、芸能やお祭りがある。

それでは、自分にとってのアイデンティティってなんだろう?

民俗芸能やお祭りと出会ったからこそ、生まれた疑問でした。

●音楽的アイデンティティ

アイデンティティとは、「自己同一性」・「個性」・「国や集団への帰属意識」・「特定のものや人であること」と言われます。

要は、社会の中で自分とは、一体何者であり、どんな人間であるのか。

また、アイデンティティについての考え方で、

多様な文化・価値観が認められる社会で、自分以外の他文化や価値観を理解し、認めることに繋がるというものがあります。

さて、その前提を踏まえ、皆さんは自分のアイデンティティって何かと聞かれたときに答えることはできますしょうか。

一口にアイデンティティといっても広義的だと思うので・・・

もう少し意味を狭めて、自分の“ルーツ”的なアイデンティティってありますか?

どこどこ出身である、

どこどこで生まれ育った、

どこどこ弁を喋ります、

故郷の郷土料理が好きとか!

生まれの場所によって、その地域の特性から生じるアイデンティティがあるかと思います。

もっと大きな括りでいうと、生まれた国によって生じるアイデンティティもあるかと思います。

さらにそれを“音楽”(以後、音楽的アイデンティティと呼ぶ)という観点で絞っていきます。

なぜ音楽か?

日本って多様な伝統的な音楽があり、さらに地域によって様々な民俗芸能があり、それらに由来するルーツを持てる国だと思うんです!

というのも、冒頭でも述べましたが、僕が見てきた民俗芸能に関わっていた皆様は、その地域の芸能やお祭りを自己の音楽的アイデンティティとして持ってらっしゃったと思います。

それでは、自分は?

周りの友人たちは?

周りの大人たちは?

もちろん、持ってらっしゃる方もいるのではないかと思いますが、

当時の自分は明確に答えられませんでした。

もちろん周りの多くの友人らも然り・・・

ここに1つの研究を取り上げたいと思います。

石井由理さんの「音楽的アイデンティティー創造の試みと結果」(2010)という論文の中で、「日本の音楽」・「郷土の音楽」・「好きな音楽」について、日本の学生を対象にアンケート調査を行っていました。

調査の結果として得られたことは、

日本の音楽」として挙げられるものは、西洋音楽形式を持つ音楽科の教科書の掲載曲や歌謡曲がほとんどということ。

「郷土の音楽」として挙げられるものは、地域に伝承される芸能や民謡に関する回答は全体の3分の1であり、その他は教科書に記載のあるような他の地域の民謡や故郷で繰り返し聞いた西洋形式の音楽が回答の半数を超えたこと。

最後に、「好きな音楽」については、大衆的な歌謡曲が大半を占め、その他、クラシックやアンデス民謡が挙げられる結果となりました。

この結果から分かることとして、

日本の音楽」や「郷土の音楽」と聞き方を変えても、日本やそれぞれの地域に伝わる伝統的な音楽や芸能が挙げられることが少ないこと。

これは伝統的な音楽や芸能が音楽的アイデンティティとして、持たれていないことにつながっているのではないでしょうか。

また「好きな音楽」という調査項目からは、

若者の音楽的な選好性は、伝統的な音楽や芸能ではなく、歌謡曲を始めとする大衆音楽に向いるが言えます。

もちろん、音楽の好みと伝統的な音楽や芸能が一致している必要は決してないかと思いますが・・・

これまでの僕の体験と研究から一つ疑問が生まれます。

伝統的な音楽や芸能が多様にある国や地域に生まれておいて、なぜ、自分のルーツによる音楽的アイデンティティを持てないのでしょうか。

この2つのギャップに対して、違和感がありました。

●和太鼓サークル卒業後、和太鼓彩でやりたいこと

先の研究から分かるように、

日本の伝統的な音楽や民俗芸能が我々の音楽的アイデンティティとして、持たれていないことが多いのではないでしょうか。

見てみたり、聞いたり、やってみるとこんなにも面白い民俗芸能が身近にあるにも関わらず、なぜこのような事態になってしまうのか。

そして、日本には歴史の長い伝統的な音楽も数多く存在する。

日本各地の素晴らしいお祭りや民俗芸能を見てきたからこそ、なんだかむず痒い思いをしました。

これをなんとかしたい!

大学卒業後、日本の伝統的な楽器に関わる和太鼓奏者として生きていくと決めたのだから、その活動で、日本人らしい音楽的アイデンティティ構築する音楽をお届けしたい!

それでは、どう具体的な行動として落とし込んでいくか。

直接的に効果がある「地域の民俗芸能を広げるような活動をしていきたい」と思いますが、

一番は、「現代人の感性に沿った日本の音楽を作り、お届けすること」だと思います。

先の研究の中で、「好きな音楽」という調査において、日本人の音楽への選好性が大衆的な歌謡曲に向いていることが分かりました。

このことから、伝統的な音楽を否定するつもりは、一切ありませんが、伝統的な音楽や芸能は現代人の選好性から少々ズレてきているのではないでしょうか。

これまで伝統的な音楽や芸能が残ってきたのは、それぞれの時代において、社会に、人々に必要とされてきたからこそ、残ってきた。

娯楽や音楽が多様化する現代において、魅力的なコンテンツ・音楽は山ほどあります。

その中で、現代人に必要とされる音楽を作らなければ、伝統的な音楽や芸能の行く末は暗いものになってしまうのではないでしょうか。

現代日本人の感性に沿った音楽を新たに作ること。

日本人としての音楽アイデンティティを構築するような音楽を作りたい。

日本には様々な音楽のジャンルや民族芸能があります。

その中から、この国や地域の風土から生まれてきた要素を抽出しながら、現代人に魅力的な音楽を作りたいと思います。

この活動が日本人の音楽的アイデンティティを構築することに寄与し、ひいては、日本の伝統的な音楽や各地域に伝承される民俗芸能により強力なスポットを当てることになるのでないでしょうか。

そのヒントが一体どこにあるのか。

民俗芸能、雅楽、能学、下座音楽、どこにあるか今は分かりません。

大学の4年間、日本のお祭りや日本の民俗芸能に向き合ってきたからこそ、この国の音楽は面白いと確信しています。

皆さまに、日本の音楽っていいな!

そんな魅力を感じていけるような音楽をお届けしていきたいと思います。

どうぞお楽しみに!

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