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「隠れ里」作曲秘話〜篠笛で紡ぐハレの日〜 by酒井智彬

日時:令和3年5月8日
執筆者:酒井智彬
タイトル:「隠れ里」作曲秘話〜篠笛で紡ぐハレの日〜

皆さま、こんにちは!
酒井智彬です!
今回は2021年4月10日「この世を目覚めさせる音。」にてソロ演奏をさせていただきました新曲「隠れ里」の作曲秘話をお話したいと思います。

まずは、4月10日にご来場くださり、本当にありがとうございました。
また、4月10日にいらっしゃられなかった方も、いつも本当に温かい応援をいただき、感謝の気持ちで一杯です。

さて、今回は作曲秘話ということですが、まずは公演を行うにあたり、僕がどんな「この世を目覚めさせる音。」をお届けしたかったかということからお話しさせていただければと思います。

それでは早速参りましょう!
今回の「この世を目覚めさせる音。」公演において届けたい音について、2つのテーマがありました。
それは、「人間味」と「生きる活力」ということです。

コロナウイルスによって、変化してしまった僕たちの生活。
その変化によって、人間の人間味が溢れ出る瞬間「ハレの日」がなくなってしまったと感じました。

「ハレの日」というのは、日本の「ハレ」と「ケ」という概念から来た言葉です。
「ハレ」というのは、祭礼や年中行事など非日常的なこと。
「ケ」というのは、普段の生活のような日常のことを表します。

この「ハレの日」について、僕は学生時代、日本各地のお祭りを見て回っていました。
そこでは、人間味溢れ、民俗芸能や祭礼行事を行う人々がいました。
日常「ケ」とかけ離れた非日常「ハレの日」だからこそ、人間味が溢れ出る瞬間があったんです。
その姿は社会のしがらみから解放された、人間本来の姿だと感じました。
その「ハレの日」があるから、次の「ハレの日」を目指して、生きる活力が出てくるのだと思いました。

しかしコロナウイルスによって、「ハレの日」が少なくなる、場合によっては、なくなって
しまいました。
これは、人間の本来の姿である人間味溢れる出る瞬間がなくなるということであり、次の「ハレの日」を目指して生きるという生きる活力の喪失だと考えました。
この事態が本当に悲しかったんです。

このような世の中で自分がなにをできるか。

和太鼓、篠笛奏者だからこその武器である「音」をお届けすることができる。
僕が音を奏でることで、一緒に「ハレの日」を作ることができると思ったんです。
人間味溢れる演奏・生きる活力を感じることができる演奏をお届けし、皆様に「ハレの日」の空間を感じていただきたい。
僕自身が「音」という武器を使って「ハレの日」を作り出すことと同じように、皆様にも自分自身の武器を使うことで「ハレの日」を作り出すことができるという想いをお届けしたい。
結果として、皆様自身が「ハレの日」を作り出し、少しでも明るく・元気な世の中になってほしいなと!

そのきっかけとなる「音」を僕のこの世を目覚めさせる音としたいと思い、今回「隠れ里」を始め、公演に臨ませていただきました。

さて、そんな想いを体現すべく作った曲が今回披露させていただきましたソロ曲「隠れ里」でした。

いよいよ、曲の解説に入っていこうと思います!

まずは曲名について!
皆様、「隠れ里」という言葉をご存知でしょうか。
読んで字のごとくですが、人里から離れ、世間から隠れた場所にある村里・理想郷という意味があります。

僕の勝手な隠れ里のイメージですが、日本の山々に囲まれ、山村のような景観が広がっています。
そこに暮らす人々は、美しい自然が豊かな中で生活を行い、そして、人間本来の姿が現れる人間味溢れ出る「ハレの日(非日常)」もあり、幸せな時間を過ごしている。
「ハレの日」を過ごすことで、人々は生きる活力を持ち、明るく元気に生きている。

まさに僕が体現したい世界だと思い、今回の曲名に選びました。
しかし、僕が思い描く隠れ里のイメージは本来、日本にあった当たり前の姿なのではないかと思います。
しかし、その当たり前が当たり前でなくなってしまったこの世の中。
そんな世の中へのアンチテーゼとして、「隠れ里」という曲名にしたのでした!

さて、曲の内容の解説に入っていきたいと思います!

「隠れ里」を公演において体現するために、僕は隠れ里に広がっているであろう景観や音に着目しました。
美しい日本の山々を連想するにはどんな音を奏でればいいのか。
そこでの「ハレの日」には、どんな音が鳴っているのか。
隠れ里に広がる景色を音にし、「ハレの日」のイメージを音に変換していきます。

景色やイメージを音にすべく、篠笛という楽器を用いました。
篠笛は、様々な情景を表すために用いられてきた楽器でもあります!

さぁ、楽器も決まり曲作りが始まります!

まず、山々の広がる景観をどう表現しようか。

緑広がる山が目の前に広がっていて、青い空に白い雲が流れている。
山の木々を揺らすように風が流れ、時間の流れはゆったりとしている。
リズムを一定に刻むというよりもゆったりとした時間の流れを意識し、「間」と「リズムの緩急」を大切にして音を並べる。

さらに日本の山々ということで、日本の音階を用います!
ちょっとマニアックになるのですが、日本の民謡や伝統的音楽に用いられるニロ(2,6)抜き短音階(音階の2番目と6番目の音使わないこと)を用いました。
これによって、旋律が僕たちの日本人にどこか懐かしいと思わせるような音に聞こえます。日本人のDNAに刻まれた音階なのです!

そして、次に「ハレの日」の音を作り込みます。
ここは、祭りの笛を連想します!
学生時代から学んできた日本各地に伝わる民俗芸能の笛、そしてコロナ禍においても、たくさんの祭り囃子をインプットしてきました。
そこで学んだ祭り囃子独特の篠笛の指運びや音の流れを用いて、隠れ里に流れているであろう「ハレの日」の音を作ったのでした。

こうして出来上がった「隠れ里」という楽曲。
「この世を目覚めさせる音。」公演にて、披露させていただき、「ハレの日」を表現させていただきました。
僕の演奏が皆様の「ハレの日」を作ることのきっかけとなっていれば嬉しく思います。
そしてその結果、世の中が少しでも明るく・元気になればこれ以上嬉しいことはありません。

「この世を目覚めさせる音。」追加公演も決まっています。

共に「ハレの日」を作っていきましょう!
本当にありがとうございました。

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