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【前篇】婲阿吽駆徹底解説ヒストリー決定版〜和太鼓×ブラックミュージック〜 by渡辺隆寛

日時:令和3年5月17日
執筆者:渡辺隆寛
タイトル:【前篇】婲阿吽駆徹底解説ヒストリー決定版〜和太鼓×ブラックミュージック〜 by渡辺隆寛

みなさんの生活の中で、「音楽」というものを一度は耳にしたことがあるでしょう。
いや、こんな言い方をするより、
「“常に”音楽というものが耳に入ってくる」といった方が正しいでしょうか。

しかし、“生で”実際に音楽を聞いたことがある人は一体どれだけいるでしょうか。
もしかしたら、学校の芸術鑑賞会を除いて、ライブというものに触れたことがない人もいるかも知れません。
この生の音楽の素晴らしさは、他にとって代わることのない素晴らしさがあります。

この素晴らしさをできるだけ多くの人に知ってもらいたい。

音楽を、耳で、目で、肌で、そして身体で感じてもらいたい!

そんな思いを乗せて作った曲が、「婲阿吽駆」です。
今回はそんな「婲阿吽駆」を、先日行った「婲阿吽駆徹底解剖S P」で話しきれなかったことを交えて、さらにパワーアップしてお届けいたします。
(なお長くなったので、2本立てでお送りいたします!)

<目次>
(前篇)
1、 そもそもファンクとは?
2、 「婲阿吽駆」楽曲テーマの「表と裏」
① 「表テーマ」
→「和とブラックミュージックの融合=フュージョン」「音楽(生ライブ)の素晴らしさ」
② 「裏テーマ」
→「16ビートの理解と実践」「西洋グルーヴの理解と実践」「ドラム技術の応用」

(後篇)
3、 最強のフュージョンバンド
(1) 「婲阿吽駆」は元々2曲だった!?
① 「技」の婲阿吽駆1
② 「体」の婲阿吽駆2
(2) なべっちと塩見さんは「一“心”同体」!・
(3) 対位法とシンコペーション
4、 この一年の総括
5、 今後の展望


1、そもそもファンクとは?

そもそもみなさん、ファンクってご存知ですか?
ジャズやブルースなど、黒人発祥の音楽「ブラックミュージック」と呼ばれるジャンルの一つです。
西田敏行さんが主演となった映画「ゲロッパ!」でお馴染みのジェームズ・ブラウンの「SEX MACHINE」は、
恐らく一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
日本でも話題となりましたね。

◆ファンクの特徴

「ファンク」の特徴をまとまると以下のようになります。
・コードの幅を制限
・メロディ楽器も打楽器のようにリズミカルに扱う
・16ビートを使った細かいリズム
・ちょっと跳ねたようなリズム
・テーマを繰り返し、テーマの改変、ソロを織り交ぜながら進行

そもそも和太鼓という打楽器を扱う中で、コードの幅を制限することや、リズミカルに打つことは今までとさして変わりません。
(むしろこの同意性が親和性につながると思い作曲に至りました。)

お客様の中で、もし目新しさを感じるとすれば、
「テーマを繰り返し、テーマの改変、ソロを織り交ぜながら進行」
ここだと思います。

「これがテーマだな!」
「お?ちょっと雰囲気変わった?」
「でもノリが一緒。」
「ここはこの人が目立つとこかな!」

こんな感じで、同じ曲の中でコロコロと、そしてスッと展開していくこの感じが「ファンク」なのです。
そして、「婲阿吽駆」の展開はこのようになります。

(婲阿吽駆1)
イントロフレーズ→テーマ→テーマ掛け合い→テーマ→テーマ掛け合い(裏打ち)→ソロ
→テーマ→テーマ(ジャズ風アレンジ)→テーマ(弱く)
(婲阿吽駆2)
イントロ→テーマ→テーマ(改)→決め→ソロ
→テーマ→テーマ掛け合い→展開
→テーマ→テーマ(改)→カオス→アウトロ

ご覧の通り、和太鼓によくある「起承転結」をド無視した構成となっており、不思議に思った方も多いのではないでしょうか。
この構成、テーマを繰り返すのが特徴の「ブラックミュージック」ならではなのです。
ここで僕がぜひみなさんにお願いしたいのが、「音楽の波に乗ること」

同じグルーヴの中で、行ったり来たりする。
身体のノリは変わらないけど、耳が心地よく展開する。
そんな風に、音楽に浸りながら聞いていただきたいのです。

ロックのように強い裏打ちでズンチャンズンチャンと「縦ノリ」するのではなく、
あえて細かいリズムを多用することで、肩を横に揺らしながら「横ノリ」でぜひ感じてください。

2、「婲阿吽駆」楽曲テーマの「表と裏」
①「表テーマ」
◆はじめに:僕とファンクの出会い

僕とファンクが出会ったのは大学生の頃。
僕はとあるライブレストランでバイトをしていました・・・

その店では、毎晩ステージ演奏が行われ、
しっとりとしたピアノの演奏から、ポップスミュージック、
楽器のみのインストライブまでさまざまな音楽が奏でられていました。
その中で、一際お店を陽気にさせたのがファンクミュージックです。

小気味のいいリズムと、思わず踊り出してしまいそうな陽気さ。
そして何より今まで出会ったことのないかっこよさ!!
これに僕は思わずイチコロでした・・・。

この素敵な音楽をぜひ知っていただきたい。
僕の世界を少しでも共有したい!
そんな気持ちで作曲に取り掛かります。

◆「和とブラックミュージックの融合=フュージョン」
アメリカには、「フュージョン」という音楽ジャンルがあります。
日本ではあまり聞き馴染みのない単語でしょう。

音楽には正解がないように、ジャズ、ロックと一口に歌い分けることは難しく、
ファンクとロックを掛け合わせた「ファンク・ロック」、
ジャズのラテン調アレンジ、「ラテン・ジャズ」などがあり、
これらを総称して、「フュージョン」などと呼んだりします。

今回僕が目指したのは、「和楽器とブラックミュージックのフュージョン」です。

僕は(恐らく彩全体も)、和楽器界は未だ「音楽発展途上」であると考えています。
それはひとえに、和楽器界が西洋音楽とはかけ離れたところにあることや、
和太鼓がどんな音楽と融合しようにも良い意味で“存在感が強く”、悪い意味で“主張の激しい楽器”であることが問題だと思っています。

−−−−−僕はこの問題をなんとか脱却したい。

いかに和太鼓を皆さまの生活にひっそりと“馴染ませる”か。
そこが今後の課題の一つだと感じました。

先にも述べた通り、
ファンク特有のリズムのきめ細やかさ、ノリ、ある種の泥臭さなんかを和太鼓とうまくマリアージュしてお届けしたい。
僕は今後「和太鼓をより多くの他ジャンルに潜ませる」ことを目標にしています。


(和太鼓で作ったドラムセット)

元々日本になかったギターやドラムがここまで受け入れられているのに、
なぜ古くからある和太鼓がこんなにも隅に追いやられているのでしょうか?
理由はさまざまあるでしょうが、僕はその一つに「和太鼓が進化してこなかった」ことに所以があると思います。
もちろん、全く進化してこなかったわけではありません。
ただ日本独特の、神格性、ある種の排他性が進化を制限しています。

和太鼓というものを、本質を残しつつ、少しずつ無理のない程度に変化させる。
これが今後僕ら和太鼓奏者に求められる大事な要素となることでしょう。

◆「音楽(生ライブ)の素晴らしさ」
そしてもう一つ大事なのは、“生ライブというかけがえのない時間”です。
僕が働いていたライブレストランでは、毎晩3ステージ演奏が行われていました。

そんな音楽を聴きながら、お食事をするお客様は、接待、デート、ライブ目当てなどさまざまな人の時間を彩っており、
僕は働きながらも、その豊かな空間に幸せを感じていました。


(勤務中のなべっち)

そして何を隠そう、僕は大のエンタメ好きで、個人的にも多くのライブに足を運んでいました。

しかし、新型コロナウイルスは、一生に一度しかないこの生ライブの時間を悉く奪って行きました。
もちろん、失ったものもあれば、代わりに得たものもあります。

しかし、不要不急と嘆かれたエンタメは日を増すごとに居場所を失って行きました。
僕は本当に悔しかったです。

学生時代、塞ぎ込んでいた僕の心を救ってくれたアイドルのライブ。
ライブを通して出会った仲間たち。
帰りの電車の中。たまには遅刻しそうになって焦ったり。笑


(これは以前中川翔子さんのとあるライブ現場で、オタク仲間と撮った写真です。笑
ちなみに、左奥でキョウリュウジャーのコスプレをしているのが僕です。笑)

ライブという存在を中心に、それは太陽系のように多くの出会いと感動が巡っています。

「この、「大新曲まつり!!!!!!」というかけがえのない時間を、どうか、どうか…
僕らから奪わないでほしい。」

この時間だけは、せめて、「僕らのものであれ」、と。
そんな思いを「婲阿吽駆」に乗せました。

手と手は繋げなくても、音楽で心と心はつながることができます。
僕はその音楽の可能性を信じて、これからも突き進んでいきます。

②「裏テーマ」
◆「16ビートの理解と実践」

さてここからは裏テーマです。笑

今年一年、僕らは「16ビート」というもの挑戦してきました。
つんく♂さんとの出会いを初め、多くの外の世界に触れるにつれて和楽器界にはない西洋音楽の常識にぶち当たることが増えました。
ここを乗り越えていこうと邁進し続けた2020年。
この曲は、去年だったら絶対に叩けない曲。
僕らが、この一年死ぬ気で戦ってきたからこそ叩ける曲です。

洋音楽において16ビートが基調となるジャンルは主に2つ。
一つはラテン、もう一つがファンクでした。

僕はファンクの表現力の豊かさに惚れ込んでいたため、即決断。
この曲を通して、「16ビートの理解と実践」に取り組むことにしました。

複雑に入り組み、細かく刻まれたそのフレーズは、
互いに絡み合いながら、一つの曲をつむぎだす。
まるでそれは一枚の織物のように。

◆「西洋グルーヴの理解と実践」
そしてもう一つ、僕個人が2020年頑張ってきたことの一つに「ドラム」があります。
和楽器を西洋文化に発展させるためには、そのための勉強が必要になります。
葛西さんが和の知識を深め、齋さんが西洋の音楽知識を深めていく中で、
僕はこの団体に何を還元できるか。


(アーミンに教わるなべっち)

僕が今現在行きついている答えの一つが「ビートの側面から楽曲を形づける」です。
皆さまの中に、なんとなく日本ぽいリズム、洋楽っぽいリズムはありませんか?

メロディで言えば、音楽コードのメジャーとマイナーのように、
なんだか陽気な音楽、少し寂しげな音楽があるのは感じられることでしょう。

メロディでいうコードのようなものを、ビートの側面から形づけ、曲を作り出そうと思ったのです。
実は、ロック特有のリズム、サンバ特有のリズム、ジャズ特有のリズムとそれぞれの音楽にそれぞれのリズムパターンがあることを知りました。

このリズムパターンの中で、テーマを遊ばせることで、いわゆる「グルーヴ」が生まれていくのです。
「16ビートの理解と実践」が団体としての挑戦ならば、
この「グルーヴの理解と実践」は、僕個人の挑戦とも言えるでしょう。

ただこの西洋のグルーヴは、日本人にはなかなか難しく、
メンバーにノリを教えるところから一苦労。。。

グルーヴを学ぶにはグルーヴしかないと思い、メンバーにはひたすら婲阿吽駆を聞けとお願いしました。笑

◆「ドラム技術の応用」
そしてよりファンクに近づけるために、こだわったのがドラム特有の技術です。
フラム、ラフ、メトリックモジュレーション、バウンスビート、さまざまな学びを彩メンバーにうまく共有したいと考えました。
やはり一番手っ取り早いのは、曲に落とし込むこと。
婲阿吽駆1の葛西ソロ、齋ソロにふんだんに!技術を盛り込み(笑)
年長者メンバーに責任持って習得してもらいました。

普段の演奏とはやはり聴き心地も違ったのではないでしょうか?
各曲の細かい説明は後半にするとしましょう。


(ドラム稽古教材)

また、いち早く知りたいという方は、
こちらの解説動画にてご紹介しておりますのでぜひご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=9XMFVGDqI9w


長くなってしまいましたが、ここまでが前半です。(笑)
前篇は「婲阿吽駆」を作るに至った経緯と、僕の熱い思いのお話でした。
やはり、生ライブという時間は偉大で大切です。
絶対に奪われていいものではありません。

そして僕の和太鼓奏者としての目標は、
「和太鼓をより多くの他ジャンルに潜ませる」
「ビートの側面から楽曲を形づける」

大きくこの二つです。

和太鼓は食材、和太鼓奏者はシェフです。
いかに美味しく進化させることができるかが、今後の僕の腕の見せ所になることでしょう。

いやはや、にしてもやはり自分の子供は可愛いものです。
愛が溢れ返しております。

話は変わりますが、トイ・ストーリー4では主人公ボニーが作ったおもちゃ「フォーキー」が登場しますが、開始早々自分はゴミだと嘆くシーンが特徴的です。
これはアーティストも同じ。
初めて産んだ作品は「これはダメだ、ゴミだ」と塞ぎ込むことが多い。
しかし、自分の中のウッディがそれを止める。
「君はゴミなんかじゃない、立派なおもちゃだ。」
P I X A Rはいつだってクリエイターの味方ですね(笑)

話はそれましたが、次回、ようやく曲の中身に進みます。
どうぞお楽しみください☺️

p.s.
これはバイト休憩中の写真です。笑
後ろがステージなのを紹介したかったのですが、僕が邪魔すぎて本編からは除外しました。笑
いやはや、若い・・・笑

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