鼓劇「イケメン二十面相」三度目の和太鼓ソロライブ by塩見岳大
日時:令和4年10月3日
執筆者:塩見岳大
タイトル:鼓劇「イケメン二十面相」三度目の和太鼓ソロライブ
2022年6月26日、
塩見岳大生誕祭2022が行われた。
今回で3回目となるソロライブ。
どんなライブにするか自由に一人で決められる分、
恒例の如くライブの形を考えるのに非常に時間がかかった。
1回目のソロライブでは塩見の人生をなぞりながら、
MCと演奏を繰り返していくスタイルで、
「お客様にもっと塩見を知っていただく」
というテーマでお送りした。
スタイルとしてはライブシアターオルフェウスで行なっていた従来の和太鼓彩の公演スタイルに近く、お客様との距離の近さという会場の長所と上手く噛み合った鉄板のスタイルだ。
MCや演奏に関しては「笑い」に重きを置きつつも、多種多様な面を披露出来た。
2回目のソロライブでは和太鼓と劇をミックスした鼓劇というスタイルを作り出し、
物語の中で演技と演奏を披露した。
「面白い事を自ら探してこそ、人生は面白くなる」
というテーマで公演を行なった。
新しく生み出したスタイルであるがために荒削りな部分もあったし、
台本制作や、それを和太鼓に繋げる作業に悩みもしたが、
和太鼓の新しい可能性を垣間見る満足のいく公演になった。
そして今回3回目。
どんなスタイルで、どんなテーマをお客様に届けるか非常に悩んだ。
悩んだので、とりあえず色々な舞台や音楽を、見て、聞いて回った。
もっと新しくて斬新なスタイルを作り出して、
皆を驚かせようと思いもした。
しかし様々なエンターテイメントを見ている中で、
自分は「物語」と「分かりやすさ」があるエンターテイメントが好きなのだと感じた。
これは別に新しい発見などではなく、
和太鼓に「物語」と「分かりやすさ」を付与して「鼓劇」というスタイルが生み出されたことを思い出し、
僕が思う面白いエンターテイメントを作る上で、
やはり「鼓劇」というのは一つの回答になるのではないかと再確認したのだ。
昨年のソロライブで鼓劇「面白探しの面志郎」を披露した後、
12月24日、ムーブ町屋にて、
和太鼓彩とWiNGSのメンバーをシャッフルして3つのチームに分け、
演奏を行う公演、シャッフルライブを行なった。
そこで塩見属するチーム、彩座 -irodoriza- は鼓劇「ハレのちユキ」を披露した。
「ハレのちユキ」はソロで行なった前作とは違い、
五人の演者がいたのに加えて、
楽曲制作や音源制作をしてくれるメンバーにも助けられた。
全員で台本を精査していく過程や、演出を追加していく中で、
新たな発見も多かった。
この2回目となる鼓劇の制作を通して、
ノウハウが大きく蓄積していき、
より精錬された鼓劇というスタイルが出来上がったのだ。
二度の公演を経て、
徐々に磨き上げられていった鼓劇。
積み重ねたノウハウと経験を糧に、
今一度一人で鼓劇を作り上げたらどのような形になるのか。
自分自身、その解答に興味が湧き上がり、
そして、挑戦してみたいと思ったのだ。
三度目の鼓劇。
この挑戦が決定してからまず最初に悩むのは、
最早恒例となっている関門、台本制作!
やはり物語は公演の中核となる要素なので、
他のあらゆる要素はこの中核に肉付けしていったものになっていく。
台本制作を失敗すると他が全て上手く行っても全体としては台無しになるのだ。
とはいえ慎重になりすぎてもつまらない。
大胆で驚きのある台本じゃないと、
お客様に楽しんでいただけないし、
塩見自身が燃えない。
様々なアイデアの海で漂流していく中、
主とするキーワードをなんとか二つに絞り込むことができた。
一つ目は「共感」だ。
一作目「面白探しの面志郎」は架空の国の物語で、楽器が言葉を喋るようなファンタジーな世界観だった。終盤は国全体を動かしていくような大きなスケールの物語となっている。
二作目「ハレのちユキ」はハレの日を司る神様達の物語で、こちらも神々の国を渡り歩くようなファンタジーな世界観。人間界のクリスマスという存在の有無をかけて神々が闊歩する壮大な冒険譚だ。
どちらの物語でも主人公達は、
日常から大きく離れた世界で、
国や世界レベルの大きな問題を解決しようと奮闘する。
塩見は少年漫画が好きで、
少年漫画に育てられ、
少年漫画の影響を強く受けているので、
そういった作風が多くなりがちなのだ。
しかし今回、
塩見のソロライブにお越しいただいているお客様は、
前作、あるいは前々作の鼓劇をご覧いただいた方、
塩見という人間を支え、寄り添っていただいた方、
そういった方々が多いと思っております。
ならば、今回は塩見ももっとお客様に寄り添い、
大きなスケールの物語をぶつけるというよりは、
近い距離感で共感していただくような物語を作ってみたいと思ったわけでございます。
二つ目のキーワードは「理論」。
塩見のソロライブや演目は比較的、
勢いと感性でぶっちぎったようなものが多い。
それは塩見自身の人生にも通じるところはあるのですが…
今回は折角積み上げた二度の鼓劇のノウハウを無駄にしないよう、
経験から理論を導き出して、完成度の高い公演にしようと心がけた。
詰まった時や、悩んだ時、違和感を感じた時に、
勢いで突っ走るのではなく、
過去の経験と照らし合わして最適解を模索する。
多分、誰もが当たり前にやっている事なのだけど、
塩見に足りてない事であると同時に、
今まで蓄積のなかった鼓劇では出来なかった事でもあるのだ。
過去の作品に優劣をつけるつもりはないけれど、
三作目となる鼓劇は過去の作品より完成されたものに仕上げたい、
という思いは強くあった。
それは二作目「ハレのちユキ」が五人のメンバーで共に作り上げ、
会心の出来であったからこそ、
一人で行う三作目の鼓劇をパワーダウンしたものとして発表したくないという思いから生まれた感情でもあるのかもしれない。
僕は「共感」をキーワードにして、
現代の日本を舞台にした、
誰もが持っているような問題を解決しようとする主人公の物語を書き上げて、
「理論」を基に、
一人で行う鼓劇というシステムをより精査して、
一人でも多彩な演奏を披露できるような設定を練り上げた。
そして生まれたのが三作目となる鼓劇…
「イケメン二十面相」だった!
…続く!
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