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新世界ときどき教育実習 by酒井智彬

日時:令和2年8月11日
執筆者:酒井智彬
タイトル:新世界ときどき教育実習

こんにちは、酒井智彬です。

和太鼓彩やメンバーのことを振り返っていくヒストリーページ!
今回は、2017年9月~2018年2月にかけて行われたツアー「新世界」を僕視点で振り返っていこうと思います。
僕がこの公演時期に何を感じていたかという身の上話が多分に含まれております。温かくお読みいただけますと幸いです。

それでは行ってみましょう!

時は2017年。
和太鼓彩2年目となった僕は、ツアー「Q」(https://wadaiko-sai.com/archives/history/200116)や「復刻版衝動」(https://wadaiko-sai.com/archives/history/200121)という大きな舞台を経験させていただいておりました。

心の中で考えていることは常に和太鼓のことばかり。

「和太鼓をもっと上手くなりたい!!」
「葛西さんを始めとする中心メンバーが作り上げる和太鼓彩の世界を一緒に見たい・作りたい!!」
「もっとお客様と一緒に楽しい時間を過ごしていたい!!」

飽くなき和太鼓への探究心が止まりませんでした。太鼓馬鹿ってやつですね。

そんな中、和太鼓彩の次のツアーが決まります。

ツアー「新世界」。
「和太鼓を社会的意義のあるものへ」というコンセプトのもと、
和太鼓と社会を融合させた様々な楽曲を披露した公演。

このツアー全8回の公演を行うということで、それはそれはたくさんの稽古を重ね、何より本番で得られる経験というものは大きい。
もちろん、和太鼓に魅力に取り憑かれた僕には、この作品に参加しないという選択肢はありませんでした。

しかし、和太鼓彩にもっと関わっていたいという気持ちとは裏腹に、当時の僕は、教育大学に通う大学3年生でした。
(当時、和太鼓彩には、様々なメンバーがそれぞれのできる限りの形で関わっていました。和太鼓を専業にしている人、社会人・学生をやりながら活動に関わっている人などなど。
僕ももちろんそのうちの一人、学生をやりながらの活動への参加でした。)

大学3年生という将来の進路を悩む僕は、学業も疎かにできませんでした。
なぜなら、教師になるという昔からの夢を持っていたからです。

小さい頃から、人を喜ばすことが好きだった僕。
自分がなにか行動を起こして、その人が笑って喜んでくれている。
そして自分もその場にいて、一緒に笑っていたい。
根っからのエンターテイナー気質を持つ少年時代でした。
だからこそ、人に直接関わるような仕事がしたかったんです。
そして、子どもが大好きだった僕。
大好きな子どもたちの純粋無垢な笑顔を見ていたい。
子どもたちのためなら、努力厭わず、彼らの役に立つようなことをしてあげたい。
だからこそ、将来は教師になりたい。

その夢のため、教育大学に進み、教師を目指していました。

そして教師になるために必要な教員免許の取得に向け、とある一大カリキュラムを乗り越えなければなりませんでした。

―教育実習―

大学3年生の僕は「和太鼓に関わっていたい」と思うと同時に、昔からの夢である「教師になる」という進路を悩む年頃で、とっても大事な教育実習と、ツアー新世界への出演の両立を試みるのでした!

(ちなみに、その頃の一番しんどかった頃の一日のスケジュールはこんな感じ。
日中は、実習校に出勤し授業を行い、退勤後から夜遅くまで稽古に明け暮れる。
その後、実習のための指導案作りと教材研究を眠気の限界まで行う。
ただただ体力のゴリ押し(笑)
若さってすごい・・・)

ツアー「新世界」と教育実習を体力の限界までもがいて、やり遂げた時、自分のやりたいことが自然と見えてきたんです。

まずは教育実習から。

●教育実習

(子どもたちの前で童謡を篠笛を吹いてあげていました!笑)

僕の当時の実習は、3週間程、小学校に出勤し、学級経営や学校運営の仕組みを学び、子どもたちの前での実際に授業を行うというもの!

大学での模擬授業の経験はあれど、実践的な授業は初めてということもあり、授業準備(指導案作り・教材研究)を入念に進めていきます。

自分の授業を準備する過程で、様々な先生の授業を実際に観察しますが、
そこで繰り広げられる授業は、これまで自分が考えていたものとは、次元の違う教育を研究する先生方の独自のもの。そこにはプロの世界が広がっていました。

それぞれの学級・児童の特性に合わせた授業。
先生が子どもたちと築きあげた信頼関係からくる、相互のやりとり、事前の授業構築。
児童の精神的な成長を願った学級経営。

挙げ出したらキリがないですが・・・
教育の研究者である先生方の膨大な勉強量・子どもたちへの熱い思いを実際に触れることができました。

経験豊富な先生方と同じようにはいきませんが、自分なりに目の前にいる子どもたちのことを思い、精一杯授業します。
担当する授業は数回ではありましたが、自分の授業の出来次第では、子どもたちのかけがえのない貴重な時間を無駄にしてしまいます。
普段、和太鼓を演奏し、お客様の時間をいただいているということもあるという思いがあるので、授業も同様に、子どもたちの時間を無駄にしてしまうのは絶対に許せませんでした。

入念な準備な結果もあり、実際の子どもたちを目の前にしての授業は事故なく、終わりました。しかし、どれだけ準備を重ねても自分の思う通りにいかなかった授業もあります。

その経験から得たものは、教育という“正解がないもの”へ向かう面白さでした。

授業一つとっても、
同じ授業でも子どもが違えば、授業内容は変わる。
先生の発問が変われば、子どもの学習への向き方も変わる。
授業の題材選びも正解はない。
また、学級経営も正解がない。
では、正解のないものにどうやって対応していくのか。
学ぶしかない。
子どもたちと一緒に日々、学んで成長していくしかない。

たかだか教育実習を経験した身でしかありませんが、“教育”の底知れない奥深さに魅了された瞬間でした。
そして、教師とい職業についたら絶対に面白いだろうとも思いました。

●ツアー「新世界」

和太鼓彩に入団し2年目となった僕は、稽古も含め、作品作りの場にいることが少しずつ増えてきました。
その中での葛西さんの考えが当時の自分にとっては、実体験が伴い、腑に落ちたんです。(時間が経っているので、ニュアンスが変わっていたら、すみません。)

「今を生きる僕たちの現代社会と和太鼓の関わり合いは希薄になってしまっている。
僕たちは今、舞台芸術っていう形で創作の和太鼓演奏に関わっているけど、この形は戦後以降に形成されただけで歴史は浅い。
長い歴史を見れば、社会と和太鼓が密接に関わってきたから、現在も人々・社会に必要とされ、その楽器が残っている。
和太鼓が残っていくためには、和太鼓が社会に、人々に、必要とされる“社会的意義”が必要である。」

この和太鼓に対する葛西さんの考えを聞いた時、自分が感じてきた創作の和太鼓演奏(創作太鼓)の持つ違和感・期待感を解決できたような気がしたんです。


高校時代に出会ったからずっと付き合っている創作太鼓。

魅力はなんなんだろうか。

太鼓を複数使うことの音色の違い?
太鼓を一度にたくさん鳴らすことによる音量?
振動?
演者の溌剌と演奏する様?

もちろん、今挙げたことは創作太鼓の魅力といえるでしょう。
しかし、自分の大好きな創作太鼓の魅力ってこんなもんなのかと、いや、もっと色々あるのではないだろうか。そんな違和感・期待感を感じていました。

そんな違和感・期待感を感じていたからこそ、こちらのヒストリー(https://wadaiko-sai.com/archives/history/200301)でも述べましたが、創作の和太鼓演奏とは太鼓と別の関わり方をする民俗芸能を勉強していたんです。

日本各地の伝わるそれぞれの芸能に出会うと、そこには、僕たちと同じく(同じといってしまうとおこがましいかもしれませんが・・・)和太鼓を演奏する人々がいました。

しかし、芸能の太鼓は、その地域の人々の生活・習慣の中に根差されたものでした。
僕自身が住んでいる地域とは比べものにならないぐらい日常の中に太鼓があったのでした。

僕たち創作太鼓と芸能の違いはそこ。

地域の人々の生活や習慣の中に太鼓があること。
つまり社会と和太鼓(芸能)が密接に関わり合っていること。

ツアー「新世界」のコンセプト「和太鼓を社会的意義のあるものへ」は、創作太鼓と社会を結び付ける公演でした。

このコンセプトは僕にとって、創作太鼓の持つ違和感を解消し、どこかに感じてきた期待感である創作太鼓・和太鼓の持つ可能性を示すものでした。
そして、和太鼓に関わっていたいと思う同時に教師になりたいと思っていた当時の自分にとって、和太鼓で教育的なこともできるのでは、と思わせるには十分でした。

和太鼓を社会的意義あるものにするという公演のテーマを掲げることができる和太鼓彩なら、和太鼓と教育どっちもできる。

和太鼓彩には、同じく和太鼓と教育について考えている代表の葛西さんをはじめ、真面目に和太鼓で世界平和を考えている岡本さん(https://wadaiko-sai.com/archives/history/190608)など様々な考えの仲間がいる。

この公演を通して、和太鼓彩で仕事がしたい!と思い始めたのでありました。

大変長くなってしまいました。
以上、酒井智彬のツアー「新世界」振り返りでした!
ありがとうございました。

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