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おかげさま by葛西啓之

日時:令和2年11月25日
執筆者:葛西啓之
タイトル:おかげさま

みなさまこんにちは。
葛西です。

時は2012年、10月。
前回のレポート(URL:https://wadaiko-sai.com/archives/history/201106)で、ついに退職に向けて動き出した葛西青年。

上司に退職の意思を伝え、メンバーにも話し、楽器購入の準備を進めながら、3月の退職まで残りわずかとなったサラリーマン生活を過ごしておりました。

退職、プロ化に向けてやらなければいけないことは山のようにありましたが、今日はその中でも最も大変?だった、「両親との話」を書こうかと思います。


2012年10月某日、仕事を終えて携帯を見てみると、珍しく父親から何件も着信が入っていました。
一人暮らしを始めてからはたまに実家に帰るくらいで、普段はあまり連絡をとっていなかったものですから、特に、父と直接連絡することはあまりなかったので、なんだろう・・と思いつつ、折り返し電話をしました。

電話が繋がると、父が開口一番、

「お前!仕事やめるって本当か!!!いますぐ実家に来い!」

・・・と。

さて、実は私は、「仕事を辞めてプロ和太鼓奏者になる」ということを、親に話していませんでした。
学生の頃に「将来、太鼓で食べていきたいな〜」なんて話したこともありましたが、その度に、「何バカなこと言ってるの!」といなされたことがあるくらい。

社会人になって、いったん彩を離れはしたもののまた復帰してからは、「太鼓やるのもいいけど、仕事もちゃんとやんなさいよ〜」なんてたまに忠告?を受けるくらいでした。

様相がおかしくなってきたのは、2012年ごろ。
仕事と太鼓で忙しくてほとんど実家には帰れていなかったのですが、両親はブログ等を通じて彩の活動を見ていたようで、「お前太鼓やりすぎじゃないか?大丈夫なのか?」などと連絡を受けることが多くなっていきました。

そりゃそうです。
ブログを見てみると毎週末色々なところで演奏しているし、メンバーもどんどん増えているし、あげく、運搬車も買ったとか書いているわけです。

親心ながら、「こいつ、いつか太鼓で食べていきたい、なんて言い出すんじゃないか」という予感がしていたのでしょう。。

親心というものが分からないまだまだ未熟な葛西青年は、そんな両親の心配をよそに、「自分で稼いだお金で好きな太鼓をやっていて、なんでこんな注意されなきゃいけないんだ!仕事だってちゃんと頑張ってるのに!」と、反発するようになり、段々と、太鼓のことを親に話さなくなっていきました。

何を話したところで、どうせ反対されるのだろう・・・と。

そして、いざ退職を決めた10月。
上司に話し、メンバーに話し、着々と準備を進めていたのですが、肝心の両親にはまだ報告できていませんでした。

上述の通り、「100%、確実に反対される」と思ったからです。
どうせ反対されるんだから、実際に辞めてから報告にいけばいいかな、なんて考えていました。

しかし、大事なところで詰めが甘い葛西青年。
この時期にとあるローカルテレビの番組に出演させていただいたのですが、そこで、「3月に会社を辞めて、4月からプロとして活動します!」と言ってしまったんですね。
実家のある神奈川では放送されないのでさして気にもとめていなかったのですが、それを母の友人が偶然見て、「おたくのお子さん仕事辞めるんだってね!」と実家に連絡がいったわけです。

・・・

そんな過程を経て、冒頭の父からの電話になります。

父からの電話を受け、渋々実家に向かう私。

・・・もうね、最悪の最悪ですよね。

会社を辞めてプロ和太鼓奏者になる!

これだけでも親からしたら納得できるはずもないのに、それを人づてに聞いたとあれば、これはもう、両親の怒りは最もです。
怒り、というか、悲しみの方が大きかったように思いますが。。。

実家での話し合いは、まさに地獄絵図、でした。

息子の無謀な決断に、そして、親にも事後報告する無礼さに怒る父。泣き叫ぶ母。

「どうせ何やったって反対するんだろ!」と殻に篭り、言葉を閉ざし、反抗する私。

議論は平行線で、お互いのボルテージがあがるばかり。

最後には、「もうお前はうちの息子じゃない!二度と帰ってくるな!」と言われ、私も売り言葉に買い言葉、「二度と帰らねえよ!」と怒鳴りながら玄関をバタン!と閉め、実家を後にしたのでした・・・。

家に帰ってから、私は泣きました。

普段あまり涙を流さない(と言われる)私。
ステージ上で感極まってうるっとくることはちょくちょくあるものの、家で涙を流すのなんていつ以来だったでしょう・・

これまで育ててくれた両親をこんなに悲しませてまで、私は太鼓をやるべきなんだろうか?
一番大切な家族と縁を切ってまで、やらないといけないのだろうか?

一度は決めたこと。
自分で決めたこと。
そうは思いながら、想像を超える両親の怒り・悲しみを前に、複雑な感情がおさえきれなくなったのです。

ただひとつ、このときの話し合い(喧嘩?)で強く思ったことがありました。

両親から、「高校も私立に行かせて、大学も出したのに、なんでこんなことになるんだ!なんでこんな仕打ちを受けるんだ!」と言われたのですが、私からしたらそれは全くの逆でした。

私からしたら、「桐蔭学園に行かせてもらったからこそ、たくさんの偉大な先生方に出会え、人生を学び、そして、大学に行かせてもらったからこそ、今の社会が抱える問題や課題を学び、だからこそ、自分のやりたいことをちゃんと実現して、もっと大きく社会に貢献していきたい。そして、それを成し遂げる力が太鼓にはある」と。

つまり、私からしたら、両親にきちんと育てていただいた“おかげさま”で、いま、「太鼓という無限の力を通じて、より良い社会を作っていきたい」という壮大な夢を追いかけることができている、という感覚だったのです。

両親から常に言われていたこと。
「世のため人のためになりなさい」「絶対に嘘をついてはいけない」。

自分に嘘をつかず、太鼓を通じて世界を明るくしていくー

この選択は、両親に教えてもらった大切なことの実現だと思っていたのです。
そして、そういう大事なことを教え、育ててくれた両親に、心から感謝をしていました。

・・・しかし、半ば私は「勘当」となった身。

そんな私の感謝の気持ちを両親に伝えるには、後ろを振り返らず、前を向いて進んでいくしかない。
いつか分かってくれるはずだ。

そう自分に言い聞かせ、プロ化に向けた準備を着々と進めていきました。

そして迎えた、2013年3月31日。
サラリーマンとしての最後の出社日。

お世話になった皆様へ挨拶をし、サラリーマンとしての最後の1日を終えました。
明日からは、「プロ和太鼓奏者」としての新しい生活が始まります。

そのスタートを気持ちよくきるために・・・私にはやらなけれいけないことが一つ、残っていました。
そう、改めて、両親への報告です。

仕事を終えた私は、その足で実家へと向かいました。

「二度と帰ってくるな!」と言われ、「二度と帰らねえよ!」と言い返して出ていって以来、約半年ぶりの実家。

「やっぱりまた喧嘩になるかな・・」「もう会ってくれないんじゃないか・・・」
そんな不安や気まずさを感じながらも、ここでちゃんと話をしなかったら一生後悔するー

そう思い、勇気を出して、玄関のドアを開けました。

「今日、会社を辞めてきました。明日からは、プロ和太鼓奏者として、和太鼓彩の代表として生きていきます。

お父さんお母さんがここまで育ててくれたからこそ、僕は自分の夢を持って、それを叶えるための決断をすることができました。本当にありがとうございました。」

感謝の気持ちを込めて、そう伝えました。

もちろん、両親からしたら複雑な思いがあったでしょう。
しかしそれを飲み込んで、受け入れてくれました。

父からは、「ここまできたら何も言わんよ。お前の人生だから、好きにやりなさい。ただ、母ちゃんを悲しませることだけは許さん」と。

そして母からは、「これを持っていきなさい」と、銀行の通帳を渡されました。

そう、「二度と帰ってこねえよ!」と捨て台詞を吐いて出て行ったあの日から、
母はもう私の決心が揺らがないことを察し、なにかあった時のために・・・と、お金を貯めてくれていたのでした。。。

いやいや、これはずるいですよね、、
私もさすがに涙。
母の愛、強し。。。

ありがたく受け取りながらも、「このお金には絶対に手を出さないぞ。いつか倍にしてお返しできるよう、金銭的にも心配かけないように頑張ろう」と心に決めたのでありました。

おかげさまでプロになってから7年間、そのお金には手をつけることなく、大事に引き出しに仕舞ってあります。

両親からしたらやはり複雑なもので、実際にライブに足を運んでくれるようになるまでにはこの先も時間がかかりましたが、こうして、約半年間の勘当を経て、無事?和解。

なんだかんだ言いながら、どんな時でも支てくれる父の強さと、母の愛を感じた出来事でした。


色々あった4年間のサラリーマン生活。
色々ありすぎた4年間のサラリーマン生活。

会社の先輩、同期、取引先のお客様、関係会社の皆様、そして家族。
たくさんの方々にたくさんの大事なことを学ばせていただいた、貴重な4年間でした。
その全てを血肉とし、いよいよ葛西青年の新たな人生が始まります。

次回、ついに、「和太鼓彩 プロ編」スタート!!!

いや〜ようやくプロか。長かった。。。笑

どうぞお楽しみに!!!

ではでは、今日はこのへんで。
ばいばい〜。

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