和太鼓彩事件簿〜蕎麦との戦い編〜 by葛西啓之
日時:令和3年7月18日
執筆者:葛西啓之
タイトル:和太鼓彩事件簿〜蕎麦との戦い編〜
みなさんこんにちは。
葛西です。
前回のレポート(https://wadaiko-sai.com/archives/history/210523)にて、プロデビュー後初のツアー「COLORS」を大盛況に終えた彩の面々。
いつもついつい重い?話を書いてしまう私のヒストリー。
今回はちょっと閑話休題して、共同生活時代の思い出を振り返ってみたいと思います。
時は2013年。
プロに飛び出した当初、私たちはボロアパートで共同生活をしていました。
…なぜ男5人で、むさ苦しい共同生活をしていたか?
シンプルに、お金が無かったからです。
本当に、無かった。
サラリーマンを退職する時に決意したことがあります。
それは、「楽器だけは一級品のものを揃えてから会社を辞めよう」ということ。
プロに飛び出す上で、まず何よりも、自分たちにとって命と同じくらい大切な楽器、和太鼓は、一級のものを揃えておきたい。
しばらくは収入の目処も立たないだろうから、それだけはちゃんとしたものを買っておこう。
ただただそのことを目標に、仕事に励んでいました。
そして2013年3月。
貯め込んだ400万円のお金を全て太鼓に注ぎ込み、プロ和太鼓奏者としての人生をスタートさせたのです。
その後いただいた退職金も、前年の収入にひもづく住民税と保険料に消え・・・
25歳のわたくしは一時、口座の残高が200円台になるまで追い込まれておりました。笑笑
さあ、そんな中始まったプロ生活。
営業に駆け巡り仕事をいただいてくることはもちろんですが、一方で、「節約」も大事な条件となります。
おかげさまでプロ初のツアー「COLORS」でまとまった収入をいただいたので、4月・5月はなんとかなりました。
しかし、6月。
忘れもしない、ひと月の売り上げが「5万円」。
利益ではなく、売り上げです。
男5人が生きていかないといけないのに、売り上げが月5万。。
この月は全員無収入で過ごすこととなりました。
それから、一致団結しての大節約生活が始まります。
時には夕飯でひと玉のキャベツを分けあったり、一個30円の肉団子を10個買ってみんなで食べたり。。
その中でも一番思い出に残ってるのは、塩見くんとの「蕎麦事件」。
ある日の夜、お腹を空かせた葛西青年と塩見くんは、夕飯について話し合っていました。
「おなかすいた〜何か食べいこうぜ〜」
「でもお金もないしな〜何か家に食べるものないかな〜」
なんて話しながら台所を漁っていると・・・
いただきものの蕎麦を発見!
しかも、1kg!!!
おおー!今日は豪華版だー!
とテンションあがりまくりな2人は、意気揚々と調理を始めました。
しかし、和太鼓彩メンバーの中でも特に料理ができない葛西と塩見。
料理ができない、というか、できないを通り越して、「料理」という概念が無い、と言った方が正しいかもしれません。
「でも蕎麦だし、茹でれば食べられるんだよね?」
そんな安直な考えのもと、家にあった唯一の小鍋にお湯を入れ、蕎麦1kgをドーン!と一気に投入。
箸でかき混ぜながら、それっぽく茹で始めたのでした。
「こんなもんでいいんじゃね?」
と、記念すべき豪華版、「蕎麦 1kg」が完成。
大皿に乗せ、食べ始めた次の瞬間・・・
!!!??
形容しがたい食感が口の中に広がりました。
口の中にまとわりつき、ドロドロとした感覚・・・
なにか、この世のものとは思えぬものを口にしたような感覚・・・
それはもはや、蕎麦、というより、“泥”に近かったのを覚えています。
しかし、超極貧生活の中、目の前にある蕎麦1kgを食べない、という選択肢はありません。
「何かを加えれば食べられるはず!」と、2人で小銭を出し合い、コンビニへ出かけたのでした。
選んだ食材は、キムチと納豆。
しめて200円也。
自宅に戻り、キムチと納豆を蕎麦に融合させながら食べてみると・・・
とても“美味しい”とは言えないものの、食べれないこともない。。。
こうして、2人で500gずつ蕎麦をたいらげたのでした。
これが共同生活時代の中でも最も過酷だった「蕎麦事件」です。
いやはや、蕎麦って茹で方がとっても大事なんですね。。。一つ学んだ、葛西と塩見でした。笑笑
さてさて、このようにして過ごしていた共同生活時代。
この6月と同じように、2013年は収入がない月が何ヶ月かあったものの、1年間なんとか生き延びたのでした。
イベント演奏やCM、テレビ出演のお仕事をいただき、なんとか人並みに生活できるようになったのはまだまだ先のお話・・・。
時は流れ、2021年5月15日。
塩見くんのソロライブを見ていて、心打たれる台詞がありました。
「人が生きるために必要なものってなんだい?
それは健康か?食事か?お金か?
全部必要だ。
全部大事なことだ。
でもそれは、なんで必要なことだ?
・・・それは、それらが人生を面白くしてくれるからじゃないのか?
それが、人生を面白くして、豊かにしてくれるからだろう!
「面白い」そのものを否定するこの国は間違っている。
・・・面白くなくて、何が人生か!」
私は7年前の「蕎麦事件」のことを思い返しながら、塩見くんの魂の叫びを聞いていました。
みなさんは、どのように感じたでしょうか。
彼がどんな想いでこの作品を作り、どんな想いでこの言葉を皆様にお届けしたか。
それは彼自身がいつか振り返ってくれることと思いますが、
夢のために生き、情熱を燃やした和太鼓彩の面々の魂が、これから先、少しでも多くの人の心に火を灯し、世界を明るく照らしてくれることを願ってやみません。
こんな時代だからこそ・・・
人は何のために生き、何のために死んでいくのか。
人間にとって幸せとは何か?
一人ひとりがしっかりと向き合い、本当の意味で自由な世界を作っていきたいですね。
それでは、本日はここまで。
ばいばーい。
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