篠笛特訓!! by酒井智彬
日時:令和3年8月17日
執筆者:酒井智彬
タイトル:篠笛特訓!!
和太鼓彩の舞台では、様々な楽曲において「篠笛」という日本の横笛が登場します。
今回のヒストリーでは、そんな和太鼓彩の音楽を奏でるために、篠笛でどんなことをしてきたのか、その秘密特訓の裏側をお届けできたらと思います!
僕たち和太鼓彩のメンバーは、高校生の部活で和太鼓に出会い、そこから始めたものが大半を占めます。同様に篠笛も。
いい意味でも、悪い意味でも独学の延長線上で進んできた部分がありました。
和太鼓彩の楽曲をもっと聴き心地よくしたい。そのための技術はなんなのか。
これを理解し、自分たちのスキルアップするため、とある先生に教えを乞うていたのでした。
この特訓が以降の様々な演奏・楽曲で活かされることとなります!
●不安定な楽器、篠笛!?
一体、何が不安定なんだと。
それは「音程(ピッチ)」です。
口に笛を当て、歌口(息を入れる穴)の唇への巻き込み具合や息の強さで音の高低が変わるんです。
例えば、ピアノなんかは、調律は必要ですが、同じ鍵盤を押さえた時、毎回同じ高さの音が出ます。
しかし篠笛は、それができないんですね。
同じ穴を押さえて音を出しても、同じ高低の音が出るとは限りません。
若干高かったり、低かったりと・・・
僕はピアノを昔から演奏してきたので、この楽器特性はえらいこっちゃです!!
さらに、竹という自然素材からできているため、温度や湿度の環境条件によっても、若干の音の高低が変わるという特性付き!
その季節やその日になってみないと分かりません。
なんとも面白い楽器ですよね!
元々、篠笛は様々な民俗芸能や伝統芸能の中で使用され、機械のように正確に音程があっていることが求められないような中で育まれてきた楽器なので、不安定さもその用途から考えると当然のものです。
この不安定さが故に日本各地の芸能において多様性が生まれたり、様々な表現や味を出すことができるんですけどね!
複数人で演奏するような和太鼓彩の楽曲の場合、このような楽器特性を持ちながらも、音程を合わせながら(ピッチを合わせながら)吹くことが求められます。(西洋的な和音に則った楽曲が多いため。)
篠笛メンバーで特訓が始まります。
各個人が安定して、それぞれの笛の特性を理解し、狙った音を出せるように訓練する。
そして、音の響きを感覚として掴むため、様々な和音の響きを一緒に吹いて、綺麗に合わせる経験を積んでいきます。
3人のうち、ひとりでもズレてしまえば、途端に響きは崩れてしまいます。
3人でそれぞれの音の調和を目指し、練習を重ねました。
この時の経験が、「SAI WORLD」(2019)で篠笛3重奏「さざなみ」に活かされることとなります。
そして2020年には洋楽器の音が入った「彩の華」にも、このような響きを感じ取り、狙った音を出す技術がふんだんに使われています!
●情景・心情を表す笛
篠笛は、様々な景色や人の心の動きや心情を表現するためにも用いられてきた楽器であります。
例えば、お祭りの再現したような笛の音だったり、田舎景色を表現したり・・
人の無念さ・悲しい気持ちや楽しい気持ちなど。
様々なシーンを篠笛は表現できるんです!
そんな情景や心情を表現するために僕たちも3人でとある練習をしていました。
それは、2人が無言劇を行い、その物語に沿ってもう1人が情景や心情を笛の音色で表現をするというものでした。
これまで僕たちは音楽として篠笛を演奏してきたので、物語に合わせて笛を吹くなんて経験はありません。
これが本当に面白い経験でした。
物語の進行を追いながら、笛を吹き、
無言劇なので、登場人物の動き一つひとつ・呼吸一つひとつに注意し、心情を汲み取る!
さて、そんなことで僕たちがやった劇というのが、
2人の侍が戦い始め、一方が負けてしまい、やられた人の心情を表すというものでした。
戦いの前の張り詰めた空気感のある情景に始まり、
すーーっと2人の侍の間を流れる風の音。
いざ、戦い始めた激しい場面の音。
最後には、「あぁ無念・・・」侍の命・人生を惜しむ心の声を叙情的に吹き上げます。
この経験が後々の演奏活動や作曲に役に活きることとなりました!
それは、酒井・渡辺で出演させていただきました「万葉のゆめ」(2020)という朗読の舞台です。
この公演は万葉集の和歌と解説を朗読で行い、その音楽を和太鼓彩が担当させていただきました。
和歌に含まれる情景や当時の歌人の歌に込めた気持ちに想いを馳せ、音を作ります。
さらに、朗読の読み手の呼吸や間に合わせて、その場で作った音を合わせました。
まさに3人で行った特訓の成果を発揮するべく、全身全霊かけて演奏させていただきました。
また、作曲活動でもこの特訓が活きることとなります。
それは「この世を目覚めさせる音。」(2021)公演でソロ演奏させていただきました「隠れ里」という曲です。(作曲秘話:https://wadaiko-sai.com/archives/history/210508)
隠れ里に広がっているであろう景観や音やそこに住んでいるであろう人の幸せな心情をイメージして作曲しました。
日本の美しい山々に囲まれた山村の景観や暮らし、人々が幸せそうに祭りを行なっている姿を頭の中で描き、切り取って音に変換する。
そうして完成した音こそが、僕がこの公演でお届けしたい“この世を目覚めさせる音。”でした。
この特訓があったからこそ、表現できたものだと思います。
さて、今回は2019年に行った篠笛の特訓の裏側についてお話しさせていただきました。
プロ和太鼓奏者・和楽器奏者として、皆様に楽しんでいただけるような音・さらに自分がお届けしたい想いを込めた音をこれからも作っていきます。
和太鼓彩、各メンバーが紡ぐ音をどうぞご期待・お楽しみください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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