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Be Ready.作曲秘話〜和太鼓彩結成10周年全国ツアー「衝動Ⅱ」〜 by葛西啓之

日時:令和4年3月9日
執筆者:葛西啓之
タイトル:Be Ready.作曲秘話〜和太鼓彩結成10周年全国ツアー「衝動Ⅱ」〜

みなさまこんにちは、
葛西です。

時は2015年。前回のレポート(https://wadaiko-sai.com/archives/history/211202)にて、第1回解散!?ライブツアーを終えた和太鼓彩の面々。
和太鼓彩一世一代の大チャレンジが目前に迫っておりました。

その名も・・・

和太鼓彩結成10周年全国ツアー「衝動Ⅱ」!!!
ドドン!!!

2005年、東京大学のサークルとして結成し、2013年にプロ化、
数々のイベント出演や自主企画でのツアーを重ねてきた和太鼓彩。
結成10周年を迎える2015年に、足立区さん・あだちエンターテイメントチャレンジャー支援事業さんご支援の元、初の全国ツアーをまわらせていただくことになったのでした。

いやはや、全国ツアーといったら、当時の私たちにとっては夢のまた夢のお話。
いつか全国をまわりたいよね・・・なんて話も、幾度となくメンバー間で交わしていたのですが、まさか結成10周年という記念すべき年に初の全国ツアーをまわることができるとは・・!
改めて、足立区さん・あだちエンターテイメントチャレンジャー支援事業さんに心より感謝申し上げます。

そんなわけでメンバー一同初の全国ツアーに向けてテンション爆上がりしていたわけですが、ツアーを飾る大切な一曲目・オープニング曲を、私が作曲することとなりました。

本日は和太鼓彩初の全国ツアー1曲目を飾った「Be Ready.」について振り返っていきたいと思います。


さて、この全国ツアーでは、これまでの和太鼓彩とは大きく変わった点がありました。
それは「作品をつくる」という考え方。

それまでの和太鼓彩の舞台はどちらかというと「ライブ感」を大事にしたものが多く、同じ演目でも日によって演出や表現が違ったり、メンバーの自由な発想をその場で取り入れたり、と、ある種フリー演技に近いようなものがありました。

しかし今回は全9公演を行う全国ツアー。
当たり前ですが、9公演全てにおいて同じクオリティ・同じ内容を届けなければなりません。
自分たちの体調や会場の状況、お客様のテンション等々に左右されず、「プロとして均一化された「質の高い作品」を届ける」という至上命題がありました。
その中で、制作会社の方と相談しながら、演者の動きを秒単位で決め、構えの高さや腕の高さなど事細かな所まで丁寧に作り込む稽古を続けていたのであります。

さあ、そんな「作品としての和太鼓公演」として、一曲目にはどんな曲がふさわしいだろうか・・・?
先述の通り、これまでの和太鼓彩とは方向性が異なるため、既存曲にそんな曲はありません。
この作品のオープニングを飾るにふさわしい一曲目の制作に取り掛かりました。

まず最初にテーマとして思い立ったのは「軍隊感」。
これまでの和太鼓彩が、一人一人が自由にワー!ガーッ!と駆け巡る「野良武士」だとしたら、今回のイメージは「統率された軍隊」。
さながら軍隊が列を微塵も乱さず行進・闊歩するかのような迫力、威圧感。
そんな雰囲気を曲で表現したいと思い、基本的には動きの取れる担ぎ太鼓で構成することに致しました。

そしてもう一つ、取り入れた要素の大きなものとしては、「ポージング」。
担ぎ太鼓の曲では割と細かいリズムを連打するものが多いのですが、むしろ極限まで打数を減らしてみたら面白いのでは?
そんな着想を元に、打数を減らし、その分大きなポージングを取り入れました。
こちらもさながら軍隊が一斉に矢や鉄砲を放つがごとく、全員で「ビシッ!」と上に下に、右に左にポージングを取っていきます。

以上2つのアイデアを元に具体的なリズムに落とし込んでいったのですが、本曲にはリズム面でも大きな特徴があります。

それは、「J-POPの構成を取り入れている」という点です。
このアイデアは元々持っていたものでして、和太鼓の曲って基本的にはリズムがどんどん展開していくので、聞いた後に印象に残りづらい、「あんな曲だったよね〜」と言いづらい、そんな思いがありまして。
いっそ構成を思いっきり「J-POP」と同じにしたら、サビが印象に残りやすいのでは?と思い立ったことに起因します。

具体的には、
イントロ→Aメロ→Bメロ→1サビ→Aメロ→Bメロ→2サビ→間奏→落ちサビ→ラスサビ
というJ-POPの基本構成と同じにする、というものです。

私の知っている限りでは、こういった構成で進行していく和太鼓の曲って存在していないので、実は超画期的なアイデアなんじゃないか、なんて思ったりしていて。笑

この構成をすることの大きなメリットとしては、「曲が分かりやすくなる」という点でしょうか。
演じる方としても観る方としても、構成が分かりやすく、サビが印象に残りやすい曲になっているかと思います。
もし皆々様の中で、「この曲印象に残りやすい!」と思っていただけている方がいたとしましたら、実は裏にはこんな仕掛けがあったのであります。

さて、このようなアイデアを元に完成していった本曲。
タイトルは「全国ツアーに向けて俺たちは準備万端だぜ!」と、そんな意味を込めまして、「Be Ready.」と致しました。

待ちに待った全国ツアーの初日。
恐らくこの日付を忘れることは一生ないでしょう。
2015年4月18日。

我々がまだ見ぬ大海原へと船出したその一曲目に、本曲をお披露目させていただきました。


Be Ready. 伝説のシーン!

Be Ready.の一音目は私のベースリズムから始まるのですが、いや〜緊張した。
緊張で右手が震えていたことを今でも覚えています。笑

もちろん緊張していたのは私だけでなく、メンバーほぼ全員。
特に本曲は1秒ごとに立ち位置が細かく決まっており、そればかりでなく、顔の向き、腕の角度、右足左足の向きや動き出すタイミングまで、めちゃくちゃ細かいところまで合わせた曲です。まさに軍隊。
誰か一人でもミスをしてしまったら、全体の空気感、「軍隊感」が崩れてしまうー
そんなことも、緊張を高めた一つの要因だったかもしれません。

おかげさまで大きなミスや事故もなく、照明とのタイミングもばっちりで、記念すべき全国ツアーのオープニングを終えることができました。

当時この曲を会場で見てくださった皆様、いかがでしたでしょうか。
それまでの和太鼓彩との違いを、そして全国ツアーに向けた私たちの大きな覚悟を感じていただけておりましたら嬉しいです。

以上、「Be Ready.」作曲秘話でした。

最後に小話を一つ。Be Ready.の衣装について。
この全国ツアーでBe Ready.のためだけに作成したなんとも贅沢なこちらの銀ジャケット。
通称「銀ジャケ」。(なんか魚の名前みたいだな笑)


茶髪パーマ懐かしい〜笑

この衣装も、私の強い希望で作っていただいたものになります。

先述の通り「軍隊感」をテーマに作ったBe Ready.なのですが、衣装もそのイメージによせてしまうと、ちょっと重くなりすぎるな〜ということで。
作っているうちに、「この曲をアイドルっぽく、キメ顔で演奏したい!」と思い立ち、衣装さんに「テッカテカの銀色のジャケットを作ってください!!!」とお願いし、作っていただきました。
これもまた、和太鼓彩の中で、というか和太鼓界の中で、ある意味一番尖っている衣装なんじゃないかと思います。
こんな無茶なオーダーも聞いてくださる衣装さんにも感謝ですね。

またいつかの公演でお目見えするかもしれない「銀ジャケ」。
どうぞお楽しみに〜

それでは、本日はこの辺で。
次回以降、全国ツアーの舞台で大きく成長・変化していく和太鼓彩に迫ります。
お楽しみに!

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