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和太鼓 de Merry Xmas🎄✨〜楽曲「ハレのちユキ」制作秘話〜 by渡辺隆寛

日時:令和4年3月25日
執筆者:渡辺隆寛
タイトル:和太鼓 de Merry Xmas🎄✨〜楽曲「ハレのちユキ」制作秘話〜

2020年10月も終わりのこと。
12月に控えたシャッフルライブ「彩座-irodoriza-」公演に向けて、
台本の読み合わせが始まった。

膨大な台詞と、多くの設定、彩座-irodoriza-の全てが詰まっていた。

そして一番最後に、
クリスマスボーイの台詞と共に、エンディング曲を披露することも明記されていた。

この読み合わせの終わり、座長である塩見さんから、
「最後の曲をなべに書いてもらいたい」との打診があった。

テーマは、「和太鼓×クリスマス」

僕の作曲史上、最高難儀の香りがした……

<目次>

◆「クリスマス」らしさの鍵はたった2つ🎹🔔!
◆聖なる夜に欠かせない、お洒落なビッグバンドジャズ🎷
◆モチーフはずばりジャズのあの名曲から🤴〜4拍子と3拍子が行ったり来たり〜
◆「いとを菓子!」は「パレード」、と来れば「ハレのちユキ」は…💃🕺?
◆仕掛け満載!最後はみんなでジングルベル🎄!
 

(参考)
史上初!和太鼓×ハロウィン!?〜ハロウィン音楽徹底解剖〜 by渡辺隆寛
▶︎ https://wadaiko-sai.com/archives/history/210919

【彩座-irodoriza-】「ハレのちユキ」オープニングムービー【12/24シャッフルライブ】
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=ls1W3IuMSd4

【鼓劇】公演直後!新作「ハレのちユキ」舞台秘話【彩座-irodoriza-】
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=m90b_E_41Sg


◆「クリスマス」らしさの鍵はたった2つ🎹🔔!

「ハロウィン」の時は、「マイナーコード」「マーチ」「楽器」
などのように、調べれば調べるほどハロウィンらしさを構成する要素がたくさん出てきた。
実は縛りは多ければ多いほど曲は作りやすい。

しかし今回は、そうは問屋がおろさなかった…

実は、クリスマスを印象づける要素はたった「2つ」しかなかったのだ!

  • ①まず1つ目は「鈴」の存在である。

正確には「スレイベル」というものを使うが、これは容易に想像できるだろう。

シャンシャン、シャンシャンという音色が、
サンタがトナカイとソリに乗ってやってくる様子や、
雪がしんしんと降り注ぐ情景が目に浮かぶ。

ただ如何せん、鈴だけでは「ビート」にも「メロディ」にもならない。
これは非常に困った。
これは次に期待するしかない。

  • ②そしてもう一つの要素が「Cメジャースケール」である。

わからない方のために言っておくと、ピアノの白いとこだけを使って作る曲のことだ。

 

この分かりやすさ、明るさ、親しみやすさが、
クリスマスソングと言うものをより多くの方に定着させ、
身近に感じさせる大きな要因の1つなのであろう。

もちろん、クリスマスっぽさはこれだけには限らない。
クリスマスソングはもともとキリスト音楽なので、
教会音楽やキリスト教的な思想が歌詞にも出ているものが定番曲には多いのだが、
これだけではどうにも曲が作りづらい。

仕方なく、調べる範囲を現代音楽に広げてみた。
すると、わかったことがある。

“本当にこの2つの要素だけだったのだ!”

 

現代のクリスマスソングから、「鈴」「歌詞」を除けば。
ただのCメジャースケールのなんてことない曲なのだ。

もっというと、夏に作られた曲でも、クリスマスっぽいコード進行の物さえ見つかった。
なんということだ……

言うなれば、「いとを菓子!ハロウィンパーティ」を作曲した時は、
・紙
・額縁
・筆
・絵の具
まで用意された状態で、「後は好きに描いてくれ」と言われたようなものだったが、

今回の「ハレのちユキ」を作曲するにあたっては、与えられたのは
・額縁と
・紙
だけだったのである。

こうなれば、次にすべき事は「筆」と「絵の具」の用意。
そして描く題材を決めるところである。
多くの想像を膨らませねばなるなるまい。

◆聖なる夜に欠かせない、お洒落なビッグバンドジャズ🎷

「ハレのちユキ」は塩見さんが作った空想上の物語である。
しかしその空想上の物語を、見ている人に届けるためには、
クリスマスと言うものを実体験に落とし込む必要があった。

そこで、僕のクリスマスの思い出を振り返ってみた。
すると、思い出す事はなんと、
飲食店でバイトしていたときのことばかりだったのである…笑

なんと使えない記憶…笑

僕がバイトしていたのは、コース料理も出しているイタリアンレストラン。
もちろんクリスマス時期は繁忙期。
学生時代は身を粉にして働いていた。笑

「ろくな思い出じゃないじゃないかぁー!笑」
と思った矢先、静かに、夜を彩るおしゃれな音楽が頭の中に響いてきた。

そう「ジャズ」である。

僕が働いていたイタリアンレストランでは、
毎晩、ジャズやファンクの生演奏が行われていた。

おいしい料理に、おしゃれな音楽。
僕の大好きな所が詰まったようなお店だった。

「そうか、これだ。」

味付けが決まってきた。
「ハレのちユキ」はジャズを題材にしよう!そう決めた。

そしてその中でも、和太鼓の力強さ、優しさを押し出すには、

「ビッグバンドジャズ」のような明るく軽快な音楽をテーマにしようと決めたのだ。

僕の作曲は骨組みから入る。

◆モチーフはずばりジャズのあの名曲から🤴〜4拍子と3拍子が行ったり来たり〜

いつかジャズでこんな曲をやりたいと思う曲があった。
皆さんはこの曲をご存知だろうか。

ビル・エバンス・トリオ いつか王子様が Evans Someday My Prince Will Come
https://www.youtube.com/watch?v=XijfrrUUqD0

ディズニー映画「白雪姫」でもお馴染みの、
「いつか王子様が」この曲は有名なジャズ定番曲なのである。

特にこのBill Evansと言う有名なピアニストの「いつか王子様」が好きなのだ。

この曲をぜひ一度聴いていただきたい。
音楽をやっていない方は、もしかしたらお気づきにならないかもしれないが、
この曲実は途中で3拍子と4拍子が行ったり来たりしているのだ。

おしゃれだ、おしゃれすぎる…

この段階ではもうなんとなくメインメロディが決まっていたので、
このメロディーを3拍子と4拍子に置き換えてみた。

?そもそも3拍子と4拍子にどんな違いがあるのか皆様はご存知だろうか?

多くの方に聞かれている曲のほとんどが4拍子の曲だと言っても過言ではない。
4拍子の曲の方が「行進」している感じや「突進感」も生まれやすい。

一方、3拍子の曲はその突進感が生まれづらく、ややゆったりとした空気が流れる。
この普段の曲にないゆったりさが、いわばファンタジーなどと相性が良い。
和太鼓彩の曲で言えば「女王のメヌエット」などがその一例だろう。

まさに「ハレのちユキ」という題材にピッタリだ。

◆「いとを菓子!」は「パレード」、と来れば「ハレのちユキ」は…💃🕺?

ここまでくれば様々な妄想が広がっていく。

「いとを菓子!ハロウィンパーティ」では「百鬼夜行」「マーチ」などをテーマにした、
いわば夜の「パレード」である。
何を隠そう、僕はディズニーオタクである。
今回の「ハレのちユキ」でテーマにしたのは、パレードではなく「ショー」だ。

この楽曲は一時間にも及ぶ大作のエンディング曲である。
この作品のラストは(ネタバレになってしまうので多くは言えないが)、
ハレの日の神様たちが和解をし、大団円を迎えると言う、
「青春」「キラキラ」そんなイメージを持った曲になるべきなのだ。

なので曲中にはセリフシーンが入っていたり、
物語を回想するような演出が加えられている

皆が手を取り合い、笑顔で同じ楽曲を叩く姿は、
まさに神様たちの青春そのものなのであろう。

◆仕掛け満載!最後はみんなでジングルベル🎄!

そしてクリスマス音楽の最大の利点であり反則技が1つある。
それはクリスマスソングのメロディーをそのまま使用してしまうことだ。

何を隠そう、クリスマスソングの大半は著作権が切れている。
ラスサビの直前に「ジングルベル、ジングルベル、鈴が鳴る」と1節入れた。

誰もが知っているこのメロディーを前にして、
皆口ずさめば童心に帰るほかない。

大人になってしまえば雪を楽しむことも少なくなる。
「あぁ、明日の電車は大丈夫か。」
「道を歩けば滑ってしまうだろう。」

つんく♂さんに作曲していただいた「四季多彩」を通して僕は感じた。
冬は、雪は、ワクワクして、ドキドキしていた。
そんな子供の頃が誰しもあったはずである。

そんな純粋無垢な笑顔を届けたい。
僕はこの楽曲にそんな思いを込めた。

「だって僕たちはハレの日の神様なんですから」と言う台詞とともに。

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